60歳・会社役員
この方は、混合タイプの脊柱管狭窄症です。 私の治療院にいらっしやる腰痛の患者さんにも、何軒か医療機関を回ってきて、 そのたびごとに違う診断を下されたという方がけっこういらっしゃいます。この方 と同じように、ある病院ではヘルニアと言われ、ある病院では狭窄症と言われたと いうわけですね。 ただ、そういう患者さんのほとんどは、ヘルニアと狭窄症の混合タイプ。この方 と同様、混合タイプの人には「体を丸めても、反らしても、両方とも痛む」という 症状を訴える方が少なくありません。すでに『椎間板ヘルニア』『脊柱管狭窄症』 といった診断を下されている人の中にも、「じつは混合タイプだった」というケー スはたいへん多いものなのです。 ・なぜこの症状が起こるのか 私は、腰椎部のトラブルは"前のほう″から"後ろのほう〟へと進んでいく傾向 があると見ています。〝前のほうのトラブル″は椎間板組織の疲弊であり、椎間板 ヘルニアが代表選手。〝後ろのほうのトラブル″は辣突起近くの脊柱管の疲弊であ り、脊柱管狭窄症が代表選手です。そして、前のほうにトラブルがあると、後ろの ほうのトラブルも進みやすくなる。つまり、椎間板ヘルニアなどが原因で腰椎が構 造的にもろくなって、徐々に地盤沈下を起こすかのように前から後ろへとトラブル が連鎖していくのです。 ですから、私に言わせれば『ヘルニアと狭窄症の混合タイプ』 が多いのは当然の こと。椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症というふたつの腰痛は、それぞれ別個のもの ではなく、〝セットの腰痛″として考えたほうがいいのかもしれません。 ・すくに症状を軽減させたいときの方法は? 「体を丸めても、反らしても両方痛い」という混合タイプの人は、腰椎の柔軟性を 高めて動きをよくすることが必要です。それに はまずは骨盤の仙腸関節の動きを回復させて、腰椎にかかっている負担を軽くする ことが大切。それだけで痛みが解消するという人も少なくありません。 それと、混合タイプの人は、『オットセイ体操』 『ねこ体操』 の両方を習慣づけて いくことをおすすめします。たとえば、「体を丸めると痛い」 のが7剖、「体を反る と痛い」 のが3割という人は、『オットセイ体操』と 『ねこ体操』を7:3の割合 で、というように、自分の痛み方の割合に合わせてそれぞれの体操を行なつていく のです。 丸めても反っても痛いわけですから、最初はこれらの体操を行なうときに痛みが 伴うと思います。しかし、それでも我慢して、腰椎を動かしていくほうがいいので す。『オットセイ体操』 にはヘルニアを引っ込める作用が期待できますし、『ねこ体 操』 には、脊柱管のスペースを広げる作用が期待できます。継続していけば、次第 に腰椎の動きがよくなつて、神経圧迫などのトラブルが軽減していくはずです。 続けていけば、着実に痛み方が変化して、いい方向へ向かっていくでしょう。ぜ ひ、「痛いから動かさないJという発想ではなく、「動かして痛みを治す」という発 想で取り組んでいってください。
60歳・主婦
この方は、脊柱管狭窄症が影響している腰痛です。 天候の崩れや変化によって痛みやしびれが増すのは、腰痛持ちにはよくあること です。もっと言えば、この傾向は、首、肩、腰、ひざなどの関節の痛みに苦しんで いる人、全般に見られます。私の治療院の患者さんにも同様の症状を訴える方がた くさんいらっしやいます。 ですから、この方の場合、椎間板ヘルニアである可能性も脊柱管狭窄症である可 能性も両方あります。半々の混合タイプかもしれませんし、他のタイプの腰痛かも しれません。ただ、強いて言えば、脊柱管狭窄症が出ているタイプのほうが、より 天候変化や気温変化の影響を受けやすい傾向があります。この方の場合も、かなり 敏感に変化をキャッチしてしまっているようなので、脊柱管狭窄症の症状が強く出 ている可能性があります。 ・なぜこの症状が起こるのか 予報が当たるくらいに腰痛症状が天候と連動するのは、自律神経が過敏になつて いるせいです。 よく知られるように、自律神経には緊張モードの交感神経とリラックスモードの 副交感神経があります。日頃から痛みやしびれなどの症状に悩まされている人は、 たいてい交感神経が過剰に優位になつているもの。そして、交感神経が過敏になっ ていると、気圧や気温などのちょっとした変化をキャッチして血管や神経を収縮さ せてしまうようになります。ゆえに天候の影響を受けて痛みが増してしまうのです。 また、腰痛の中でもとりわけ脊柱管狭窄症は、血流が滞ると症状が顕著に悪化し ます。急に寒くなつたときや気圧が下がったときは、血管が収縮して血液の巡りが ぐっと悪くなるもの。このため、気温や気圧の変化に合わせて、しびれや痛みなど の症状がひどくなりやすいのです。 ・すくに症状を軽減させたいときの方法は? こうした天候や気温の変化による症状悪化を緩和させたい場合、力を注くべきは 「体を温めて血流をよくする」「副交感神経を刺激して体をリラックスさせる」のふ たつです。 そして、このふたつを両方とも解決してくれるのが入浴です。お風呂でゆっくり 湯船に浸かれば、体が温まるのはもちろん、自律神経がリラックスモードの副交感 神経優位になり、心も体も緊張を解きほぐすことができます。お風呂のお揚は39 度くらいのちょつとぬるめがおすすめ。腰の調子が悪いときは、1日に2度入浴し てもいいと思います。のぼせや湯冷めに気をつけながら、うまくお風呂を活用して 症状緩和に役立てていってください。 それと、普段の習慣としては、ウォーキングを行なうといいでしょう。ウォーキ ングを行なうと、自律神経のバランスが整えられますし、足腰はもちろん全身の血 液の巡りがよくなります。この際、短時間でも構わないので、できるだけ正しい姿 勢で歩くように心がけてください。 とにかく、大もとの原因となる腰痛を解消させれば、"症状の天気予報〟も外れ るようになつていくはず。ぜひ腰痛を治して、いい意味で"天候変化に鈍感な体〟 に変えていくようにしましょう。
65歳・自営業
この方は、混合タイプの脊柱管狭窄症です。 最初に言っておくと「体を丸めて寝たほうがいい」という医師のアドバイスは正 しくありません。椎間板ヘルニアにしても脊柱管狭窄症にしても、腰痛を防くには 仰向け姿勢で寝るのを基本にするのが正しいのです。 多少痛くても、腰のためには仰向けでまっすぐ寝るほうがいい。この方のよう に、体を丸めて横向きで寝ていると、かえって状態を悪くしてしまう場合もあるの です。とりわけ椎間板ヘルニアがあると、体を丸めた寝方は症状悪化につながりや すくなります。この方の場合も、おそらく脊柱管狭窄症という診断は出ていても、 椎間板ヘルニアを合併している混合タイプなのでしょう。だから、横になって体を 丸めて寝ているうちに症状をひどくしてしまったのかもしれません。 ・なぜこの症状が起こるのか 「痛くて仰向けでは寝られません」と訴えている方に、「それでも仰向けで寝てく ださい」というのは酷なことかもしれません。しかし、長い目で見れば、仰向けで 寝るほうが、治りも早いし苦労せずに済むのです。 なぜなら、"仰向け寝″は、人間が寝る姿勢の基本形であり、荷重のかかり方が もっとも自然で負担が少ないから。専門的には『ゼロ・ポジション』というのです が、背骨や骨盤はもちろん、体の重みが各関節に正しく無理なくかかるのです。横 向き寝になると背骨も曲がるし、骨盤の左右どちらかに体の重みがかかり、どうし てもアンバランスになつて関節に負担がかかってしまいます。そこへいくと仰向け 寝は、人体力学の点から言ってもバランスがよく、関節への負担がたいへん少ない わけです。 つまり、一時的に痛いのを我慢しなくてはならないとしても、「関節に無理のか からない正しい姿勢」で寝るのを習慣づけてしまうほうが、長い目で見ればおすす めなのです。 もちろん、寝ている間中、一晩ずっと仰向けでいなくてはならないわけではあり ません。寝返りは打っていいですし、むしろ、頻繁に寝返りを打って姿勢を変える くらいのほうがいいのです。寝返りを打つと腰周りの筋肉を使いますし、体のバラ ンスをよくする整体のような効果も期待できます。 ただ、いろいろ姿勢が変わったとしても、最終的には仰向けという基本形に戻る ことが大事。私の患者さんにも、仰向け寝にしたことで脊柱管狭窄症の症状がラク になつたという人が数多くいらっしやいます。ぜひみなさんも仰向けを基本にして 寝るようにがんばってみてください。 ・すくに症状を軽減させたいと書の方法は? どうしても仰向けになると痛いという場合は、就寝の際にうつ伏せ寝の姿勢から スタートすると、あとから仰向けになつたときに比較的ラクになります。たとえ ば、ふとんに横になる際にまずはうつ伏せになり、枕部分にタオルなどを敷いてひ じを立てて、スマホを見たり本を読んだりしてみてはどうでしょう。30分ほどこう したポーズをとっていると、腰の筋肉が適度に伸展するため、仰向けになった際に 腰に痛みが出にくくなるのです。 睡眠時の腰痛にお悩みの方は、実践してみるといいでしょう。
72歳・無職
この方は、純粋タイプの脊柱管狭窄症です。 多くの場合、脊柱管狭窄症は椎間板ヘルニアと混合しているものなのですが、こ の方の場合は『純粋な脊柱管狭窄症』と判定してよさそうです。「両足のしびれ」 「間欠性破行」「夕方になると悪化する」などは、いずれも脊柱管狭窄症に特徴的な 症状。また、「足の裏のチクチク、ジリジリとした違和感」も脊柱管狭窄症の患者 さんがよく訴える症状です。 この足裏の違和感は、「針の山の上を歩いている感じ」だけでなく、「火の上を歩 いている感じ」「焼かれているような灼熱感」「足裏全体が麻痺している感じ」「雲 の上をふわふわと歩いている感じ」などと表現されることもあります。こうした違 和感は、椎間板ヘルニアの人はまず訴えません。この足の裏の症状があるのは、脊 柱管狭窄症の症状がとても強く現われているというサインのひとつなのです。 ・なぜこの症状が起こるのか 足の裏は人体のいちばん下にあたる部分。ここを巡る神経は腰椎部の脊柱管に端 を発しています。腰や足の症状と同じように、脊柱管のスペースが狭くなり、内部 の神経が圧迫刺激されることにより、チリチリ、ジリジリとした足裏の症状が引き 起こされているのです。ですから、足裏の症状を解消させるには、脊柱管のスペー スを広げて神経圧迫を和らげることを第一に考えなくてはなりません。 ・すぐに症状を軽減させたいときの方法は? では、脊柱管のスペースを効率的に広げるにはどうすればいいのか。そのため に、習慣にしていただきたいのが『ねこ体操』。これは、正座をした姿勢から上体 を前へ探く倒していき、ねこのように体を丸めていくエクササイズです。 そもそも脊柱管狭窄症は、体を反らすと痛みが増し、体を丸めると痛みが和らく という特徴があります。痛みが和らぐのは、体を丸めたほうが脊柱管が広がりやす いから。このため、普段から『ねこ体操』 で腰を大きく丸めるようにしていれば、 脊柱管スペースが広がり痛みが軽減されるのです。継続していけば、足の裏の症状 を解消させるのにも大いに効果を発揮するはずです。ぜひ朝晩行なつて習慣づけて いくといいでしょう。 もっとも、この『ねこ体操』は、床に寝そべる必要がありますので、日中の外出 時、足の裏の症状が出てきたときに、その場で行なうわけにはいきません。外出先 などで「いますぐこの足裏の症状をどうにかしたい」という場合には『テニスボー ル踏み』 を行なうのがおすすめです。 こちらは、読んで字のごとく、1個の硬式テニスボールを用意しておいて、症状 が出たときに足の裏で踏みつけるエクササイズ。靴を脱ぎ、地面や床にボールを置 き、何かにつかまりながら足裏でボールを踏みつけてください。踏む力に強弱をつ けながらボールをごろごろさせて、足の裏をまんべんなくマッサージするといいで しょう。これを行なうと、マッサージの刺激によって神経の緊張がほぐれてくるの で、出先でもわずらわしい症状を軽減させることができるはずです。
45歳・会社員
この方は、混合タイプの脊柱管狭窄症です。 先にも述べたように、坐骨神経痛は椎間板ヘルニアでも脊柱管狭窄症でも現われ ます。イスに座り続けているとしびれてくるのは椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛 の特徴であり、夕方に症状がひどくなったり、太もも書やひざ下全体にしびれが出 たりするのは脊柱菅狭窄症による坐骨神経痛の特徴です。おそらくこの方の場合、 両方の症状が出ているのでしょう。 40代半ばで脊柱管狭窄症が現われるのは通常よりも少し早いのですが、過去に ぎつくり腰を患い、もともとヘルニアがあったところへ脊柱管の狭窄が進んでき て、神経が圧迫された結果、坐骨神経痛の症状が現われていると考えられます。 ・なぜこの症状が起こるのか 坐骨神経痛のしびれ症状は、神経の流れと血液の流れの両方が滞ることにより起 こります。 流れを悪くする要因はいろいろありますが、中でも気をつけたいのが〝長時間座 り続けての作業″と"足腰の冷え″です。前者の対策としては、小まめに休憩を とって体を伸ばすのがいちばん。デスクワークでパソコンを打ち続けているとつい 時間が経ってしまうものですが、意識的に席を立って、少し体を動かすようにして ください。30分から40分ごとに背伸びをしたり、トイレへ行ったりするだけでもだ いぶ違うはずです。 また、後者の冷え対策は、あの手この手を使って足腰を温めるようにしてくださ い。ひざかけやストールで足腰をくるんだり、使い捨てのカイロを貼ったりすると いいでしょう。坐骨神経痛の場合、カイロは「腰の仙腸関節部分」「お尻の横側の 部分」「ひざ小僧の下のやや外側部分(排骨頭の位置)」の3点に貼るのが有効です 。これらのポイントを温めていれば、神経の流れや血液の流れをよ くしてしびれなどの症状を抑えることができるでしょう。 それと、家に帰ったらゆっくりお風呂で温まりましょう。日々の入浴による温熱 刺激は、神経や血液の流れをよくするのに欠かせません。さらに、足湯を習慣づけ るのもおすすめ。足湯をする場合は、深めのバケツなどを用いてひざ下全体を湯に つけて温めるようにしてください。 ・すくに症状を軽減させたいときの方法は? デスクワークなどでイスに座っている最中に坐骨神経痛の症状に襲われた場合、 スピーディに問題を解消してくれるおすすめの方法があります。 それが『排骨頭マッサージ』です。排骨頭とは、ひざ小僧の下のやや外側にある ビー玉サイズの小さな出っ張りのこと。この出っ張り付近はひざ下へ向かう神経の 流れが集中するポイントであり、ここをつまんで力強くもんだり軽く動かしたりす ると、神経の流れがよくなって、しびれなどの症状を即時的に改善することができ るのです。 この『排骨頭マッサージ』ならデスクワーク中に机の下で行なうことができます し、会議中にこつそり行なうこともできます。とくにひざ下のしびれ症状に対して 大きな効果を発揮するので、ぜひさまざまなシチュエーションで実践してみてくだ さい。
63歳・主婦
この方は、混合タイプの青書鉄也乍症です。 この方のように、足腰のしびれや痛みから、休み休みでないと歩けなくなる症状 は『間欠性破行』と呼ばれていて、脊柱管狭窄症の特徴的な症状のひとつとされて います。 ただし、間欠性破行は椎間板ヘルニアでも起こります。とくに、脊柱管狭窄症と 椎間板ヘルニアの混合タイプの人は、歩行時に間欠性破行が現われやすく、どちら か一方の足により強い症状を訴える傾向があります。この方も足のしびれ方からす ると、おそらく混合タイプでしょう。 混合タイプで間欠性破行が現われている場合、脊柱管狭窄症の症状が強いのか、 椎間板ヘルニアの症状が強いのか、どちらなのかをよく見極めながら、治療を進め ていく必要があります。そして、治療を進めながら、できるだけ"歩くこと〟をや めないようにがんばっていかなくてはなりません。 間欠性破行の症状は、「痛いから」「しびれるから」といって歩かずにいると、ど んどん進んでいってしまいます。だから、「歩くことで治していく」というくらい の気持ちを持って、多少つらくとも日々歩き続けていく姿勢が求められるのです。 ・なぜこの症状が撞こるのか 背中を反らして歩いていると、どうしても脊柱管に圧がかかり、スペースが狭 まって中の神経が圧迫されやすくなるもの。歩き続けるうちに足や腰がしびれてく るのは、基本的にこの神経圧迫が原因です。 ただし、それならば背を丸めて歩けばいいのかというと、そうでもありません。 後でご説明しますが、私の長年の治療経験上、脊柱管狭窄症の人も"なるべく正し い姿勢″で歩くほうが治りが早いのです。とりわけ、脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニ アの混合タイプの人は、いい姿勢を意識して歩くほうがいい。症状がつらくなって きたら休憩を挟んで構いませんので、できるだけ正しい姿勢で歩くように普段から 習慣づけてください。 ・すくに症状を軽減させたいときの方法は? では、間欠性破行が出ているときに、姿勢よく長く歩き続けるためには、どんな コツを身につけていればいいのでしょう。 こういう場合におすすめなのが 『靴ひも&背伸びストレッチ』です。これは、歩 き続けてしびれや痛みなどの症状が出てきたときの休憩時に行なうストレッチ。ま ず、いったん腰を落とし、片方の靴ひもを結び直すような格好をして十分に背中を 丸めます。そして次に、体を起こし、天に向かって斜め45度の方向へ思いっきり体 を伸ばすのです。 つまり、このように体を「丸める/伸ばす」を数回繰り返すことによって、脊柱 管のスペースを広げ、神経圧迫をゆるめることができるわけです。体を屈伸させる と足腰の血液循環が促されるので、この点もしびれや痛みを軽減させることにつな がります。 私の患者さんにも、この『靴ひも&背伸びストレッチ』を取り入れたことで長く 歩けるようになったという方が少なくありません。みなさんも、ぜひ試してみてく ださい。
58歳・主婦
この方は、腰椎分離症・すべり症が現われているタイプの脊柱管狭窄症です。 腰椎分離症・すべり症は、頼突起と呼ばれる腰椎の後部パーツが疲労骨折を起こ して発生する腰痛です。体を激しく反る動きによって起きることが多く、この方と 同じように、若い頃スポーツをやっていて骨折をするケースが目立ちます。 そして、この腰痛はいったんは治ったように思っていても、歳をとってから再び 痛み出すことがめずらしくないのです。また、腰椎分離症・すべり症があると、脊 柱管狭窄症も進みやすくなります。この方のように、「昔痛めたところがまた痛む ようになってきて、整形外科へ行ってみたら、分離症・すべり症だけでなく脊柱管 狭窄症まで指摘されてしまった」というのも、わりとよくあるパターンです。 このように、歳をとってからぶり返してくる腰椎分離症・すべり症には、ヘルニ アや狭窄症が混じっているケースが少なくありません。また、病院での検査時に脊 柱管の狭窄が進んでいた場合、腰椎分離症・すべり症が見逃されて、脊柱管狭窄症 と診断されるケースもあります。 なお、腰椎分離症・すべり症が原因になっているかどうかは、腰の背骨の真ん中 (腰椎4番5番)を押してみればわかります。押してみたときにズキンという痛み があれば腰椎分離症・すべり症があると見ていいでしょう。 ・なぜこの症状が起こるのか 腰椎は、加齢とともにじわじわと老化しています。骨と骨の間でクッションの役 割を果たしている椎間板の弾力やみずみずしさが失われ、腰椎関節も次第にすり 減って、腰椎が全体に不安定さを増してくるのです。さらに、不安定さが増すと、 かつて痛めたところが再び痛み出したり、骨がずれた場所がまた痛んできたりとい うことが多くなつてきます。中年以降の腰椎分離症・すべり症は、こうした〝ぶり 返しパターン″で起こるのがほとんど。また、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症があ ると腰椎の不安定さがいっそう増すので、これらの腰痛の進行が腰椎分離症・すべ り症をぶり返させるのに影響している場合も少なくありません。 ・すぐに症状を軽減させたいときの方法は? 意外かもしれませんが、腰椎分離症・すべり症の痛みを解消させるには、腰に "ねじる動き″〝ひねる動き″を加えるのが有効です。なぜなら腰を大きくひねる と、腰椎の後部頼突起の分離したりずれたりしていた部分が、元の正しい位置に 戻ってきやすいからです。 そして、このためにおすすめなのが『体ひねり体操』です。これは、床に仰向け になり、下半身と上半身を逆方向に向けて腰をひねるエクササイズ。腰椎分離症・ すべり症の予防と解消に有効なのはもちろんですが、これを行なうと背骨と骨盤の 連携性が高まるため、ヘルニアや狭窄症など、腰痛全般を予防することにつながり ます。 私の患者さんには、この 『体ひねり体操』 を行なったら「ストンと痛みがなく なつた」という人もいらっしやいます。朝晩、起床後と就寝前の習慣として行なう といいでしょう。
48歳・パート
この方は、椎間板ヘルニアが強いタイプの脊柱管狭窄症です。 この方のように、深く身をかがめると片側の足がしびれたり痛んだりするという 人は、けっこう大勢いらっしやいます。坐骨神経痛の症状が出ているわけですが、 原因となっているのは脊柱管狭窄症ではなく、ほぼ間違いなく椎間板ヘルニアだと 考えられます。 なぜなら、「片側の足に症状が現われる」「身をかがめると症状が悪化しやすい」 というのは、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の大きな特徴だから。これに対し、 脊柱管狭窄症による坐骨神経痛では、「両足に症状が現われる」「姿勢に関係なく症 状が現われる」という場合が多いのです。 ・なぜこの症状が起こるのか 深く身をかがめたときにだけ症状が現われるのは、その姿勢をとったときにヘル ニアが神経に触れている証拠です。このため、症状を避けるには、まずは体を屈曲 させる姿勢をとらないように心がけることが第一。靴下を履くときなどは、イスに 腰掛けて、痛い側の足を反対側のひざにのせて履くようにするだけでもだいぶ違う はずです。 また、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛がある人は、痛い側のお尻の横から太も もにかけての梨状筋という筋肉が緊張してこつている傾向があります。ですから、 この部分の筋肉をマッサージするなどして、普段からよくほぐすように習慣づけて おくといいでしょう。 ・すくに症状を軽減させたいと書の方法は? 椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の症状は、お尻横から太ももにかけての梨状筋 のこりをほくすことによって軽減させることができます。ここでは、その方法をふ たつ紹介することにしましょう。 ひとつめは、『テニスボールごろごろマッサージ』。これは、平らな場所で横にな り、お尻や太ももなどの痛い部分にテニスボールを当てて、そこに体重をかけ、 ボールの球体を生かしてごろごろとマッサージをする方法です。これを行なうと、 ボールの圧力刺激が患部に伝わって梨状筋のこりがほぐれ、効果的に症状をやわら げることができます。 ふたつめは、『足L字ストレッチ』 です。こちらは、ふとんなどに横になり、痛 い側の足を真横へL字状に曲げるストレッチ。ひざを90度に曲げると、お尻から太 ももにかけての梨状筋の緊張がゆるみ、これにより症状を軽減させることができる のです。 『テニスボールごろごろマッサージ』 も 『足L字ストレッチ』 も、朝の起床時に行 なえば、靴下を履いたり靴を履いたりする際の症状をかなり抑えることができるは ずです。 また、『足L字ストレッチ』 は、座った姿勢でも行なうことができるので、床や 畳に座って生活をしているのであれば、テレビを観たり食事を摂ったりしながら実 践することが可能です。足腰の調子がよくないときはもちろんですが、坐骨神経痛 の症状を予防・解消するためにも、生活の中のさまざまなシーンで積極的に行なう といいでしょう。
54歳・会社員
この方は、椎間板ヘルニアが強いタイプの脊柱管狭窄症です。 『脊柱管狭窄症』という診断が出ているようですが、この方も狭窄症とヘルニアの 混合タイプ。現われている症状は、間違いなく椎間板ヘルニア特有のパターンで す。車の運転など、長時間座り続けることで片側の腰や足に症状が出るのは、ほぼ ヘルニアによる症状と見て差し支えありません。車の運転以外にも「映画館で2時 間座っていられない」「デスクワークを長く続けることができない」「長時間の会議 が苦痛だ」といった訴えをする人もいらっしやいます。 なお、腰だけでなく、お尻や太ももの外側に症状が出ているとのことですが、こ れは椎間板ヘルニアによって坐骨神経痛が現われていることを示しています。坐骨 神経痛は椎間板ヘルニアでも脊柱管狭窄症でも両方とも現われますが、ヘルニアが 原因の場合はお尻の外側や足の外側、つま先、かかとなどに症状が出る傾向があ り、脊柱管狭窄症が原因の場合は、お尻の中央や足の内側、ひざ下全体に症状が出 る傾向があります。このため、お尻や足のどの部位に症状が出ているかによって、 ある程度腰痛の原因を絞り込むことが可能なのです。 ・なぜこの症状が起こるのか この方の場合、腰椎の椎間板の右側に小さなヘルニアがあって、右のお尻や右足 方面に向かう神経を刺激していると考えられます。ヘルニアは前かがみ姿勢で悪化 しやすいのですが、運転中はどうしても前かがみにならざるを得ないため、長時間 ハンドルを握っていると、飛び出したヘルニアが神経に触れて、右側の腰や足に症 状をもたらすことになるのです。 ですから、運転中の腰痛を防ぐには、姿勢やハンドルを握る時間に十分に気をつ けることが大切になります。 ・すくに症状を軽減させたいときの方法は? まず、運転時の姿勢ですが、シートをリクライニングさせて運転するのはNG。 なるべくシートを起こし、骨盤をまっすく立たせ、背筋を伸ばしてハンドルを握る ようにしてください。それと、シートが低いのもよくありません。座布団などを 使ってなるべくイスを高くして運転するようにしましょう。さらに、坐骨神経痛が ある人の場合、シートの座面が硬いとお尻やひざ裏が刺激されて症状が増す傾向が あるので、お尻の下やひざ裏が当たる部分にやわらかいタオルなどを挟んで運転を するのもいいと思います。 また、症状を悪化させないためには、長時間の運転を避け、小まめに休憩をとる ことが重要です。休憩の際は、車から降りて体を伸ばし、軽いストレッチをするよ うにしましょう。 そして、この際にぜひ行なっていただきたいのが 『仙腸関節ストレッチ』です。 これは、痛みがある側の腰を後ろから押して、固まってしまった骨盤の仙腸関節の 動きをよくするためのストレッチ。これにより仙腸関節の動きがよくなると、腰椎 椎間板にかかっていたプレッシャーが軽くなり、椎間板ヘルニアの症状が軽減され るのです。 私の患者さんの中にも、「このストレッチを行なうだけで、運転中の痛みやしび れがおさまる」という人が少なくありません。とくに長く運転する場合は、サービ スエリアなどでの休憩時に必ず行なうよう習慣づけることをおすすめします。
55歳・会社員
この方は、椎間板ヘルニアが強いタイプの脊柱管狭窄症です。 この方のように、「くしやみや咳が腰に書く」という症状は、椎間板ヘルニアが 重度に進んでしまっているサインです。これ以上悪化させてしまうと、痛みで動け なくなるようなケースも出てきます。先にも述べたように、椎間板ヘルニアの症状 は、仙腸関節を矯正するなどの適切な治療を行なえば解消させることが可能です 。症状を我慢していてはいけません。脊柱管の狭窄が進まない うちに、できるだけヘルニアを治してしまうことをおすすめします。 なぜこの症状が起こるのか 腰にくしやみや咳の衝撃が響くのは、それだけ腰椎の椎間板が不安定な状態だと いうこと。ヘルニアが飛び出ていて、ちょつとした刺激でも神経に触れる状況に なつているために、くしやみなどで体を屈曲させた際にヘルニアが神経を刺激し て、強烈な痛みをもたらすのです。 もっとも、痛いからといって安静にしてばかりではいけません。椎間板ヘルニア はじっとしていてもよくはならないのです。むしろ、患部を安定させたうえで、歩 いたり家事をしたりし、通常の日常生活を送るほうが治りが早まります。痛い場合 は、痛み止めを飲んでも構いません。運動をしたり筋トレをしたりする必要はあり ませんので、とにかく、できるだけ姿勢を正して歩いて、普通に活動することを目 指すといいでしょう。